''かんとうしょうえ''の痛風日記

一病息災と心得て、「よかった探し」をしながら、日々感謝して暮させてもらっています

鶏卵とごはん

家にもどった梅安は、先ず、火を起こして魚の干物を焼き、大根の漬け物を出して冷酒のみはじめた。
つぎに、おせき婆がこしられえた味噌汁を温める。
  中略
梅安は、鍋の熱い味噌汁へ生卵を二つ落とし込んだ。
             池波正太郎著『梅安乱れ雲』の中の「殺気」より

池波正太郎作品には食事に関する場面がよく出てきます。
何気ない朝ごはんの風景です。梅安は帰ってきたところなので食事の後、眠ることになります。それにしても、大人のこころをくすぐる食事風景です。

なんと言うことのない飾り気のない、それでいてこの朝ごはんの美味さは大抵の方がご存知です。たまたま上記の作品では卵を味噌汁に入れていますが、熱熱のご飯なら卵の黄身の甘さもご飯とのバランスも判ってもらえるはずです。

「生玉子 醤油の雲に きみの月」
という川柳が有名です。

卵かけごはん、美味しいです。
こんなつましいものが日本人は好きなんて、面白いです。生卵を食べる習慣のある国は日本を除いて、ほとんどありません。生卵は当たる代表格です。加熱するのがごく普通です。また、日本人ほど半熟も愛されていません。

日本人の思う半熟は生に近い半熟です。西洋人の好きなのは、もう少し火の入った、加熱した半熟です。

日本は四季に恵まれ、生魚、生卵も食する少し変わった国です。でも、そんな国が私は大好きです。卵だけでなくごはんのある生活は日本人に生まれてよかった。感謝の念が絶えません。

いまごはんの消費が少なくなっています。パンやパスタやピザなど手軽に食べられるファーストフードがいっぱいあります。でも、卵がけごはんを彷彿させる食事はなかなか出会えません。

卵がけごはんだけでなく、大根の漬け物、焼いた干物もおいしいです。ましてや、日本酒とくれば日本人に生まれて良かったと心の底から感じます。
その地域の食材と酒は良く合います。

日本食にこだわる事はありません。オムライスも卵とごはんから出来ています。ニラ玉もご飯とよく合います。料理の生まれは違っていても、今では立派な日本の食事です。そこには、卵とごはんと言うゴールデンコンビが存在します。
豆腐百珍のシリーズに『玉子百珍』と言う書物があります。江戸時代の人も卵は貴重であったけれども好きであったことがわかります。「梅安」も江戸時代の人です。

玉子にごはん、共に江戸時代ではご馳走です。現代人以上に食に対して感謝の気持ちが強かったと想像します。いま一度、日本食のよさ、和食の美味しさを思い知ることが必要です。

久しぶりに鯵(あじ)の干物に大根かきゅうりの浅漬けで、冷酒の呑みたくなりました。もちろん〆は卵がけごはんです。安立の名店「きらく」のように雑炊もいいかもしれませんね。悩みます。うれしい悩みです。

今日も最後まで読んで下さった方にこころよりお礼申し上げます。
ありがとさんです。