''かんとうしょうえ''の痛風日記

一病息災と心得て、「よかった探し」をしながら、日々感謝して暮させてもらっています

十時半睡『観音妖女』から。

兎角、世の中には不思議なことが多いです。
人の中でも、不思議なことに出会います。
人の縁(えにし)も、不思議なご縁であると感じます。

十時半睡事件帖と言えば、白石一郎氏の名作です。
NHKのドラマ金曜時代劇でもやっていましたね。
主人公の老人・十時半睡を名優・島田正吾が、演じます。

藩のいろいろな要職を歴任した後、ようやく隠居した老武士が、主命により、思いがけない再び出仕を命ぜられる話です。
その役職は、新設の総目付というお役です。
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常勤というよりは、目付の相談や英断を仰ぐことが多いですね。
こうした役職には、いろいろな要職に就かれた経験が特に大切です。
利益だけでなく、綺麗にまとめるには、こうしたお方の知恵が大切です。

その場では、なんとく曖昧でも、時間が経てば、治まりがいいこともあります。
人のうわさも75日と言いますからね。
白黒付けるだけが、いい決断ととはいえません。
こうした判断も、大人の知恵であることも多いです。

老人が主人公というのですから、なかなか面白いです。
このシリーズは大好きです。
最初はドラマから入りましたが、やはり活字で読む楽しさの方が勝っています。

とはいえ、名優・島田正吾にして、島田正吾にしか出来ないはまり役です。
声の加減といい、この人のために書かれたような作品であるとも思います。
ですから、私の頭の中での、十時半睡も島田正吾の声がします。

いいです。
とにかく、いいですね。
舞台人ですから、あまり多くはテレビには見かけません。

鬼平犯科帳」でも、「血頭の丹兵衛」(1989年)、元は大盗賊の頭、蓑火の喜之助として、峠の茶店で、蟹江敬三扮する小房の粂八と会話をします。
盗みの極意です。
「犯さず、殺さず、貧しきから盗まず」と3つの教訓を伝えます。

長谷川平蔵も、近くで聞いています。
少ない台詞ながら、本当の元大盗賊の頭、蓑火の喜之助として言葉にすら感じました。
「間」の取り方が絶妙です。

ドラマの最後の登場しながら、作品を食ってしまった感があります。
ジプシークインの音楽を背に、先に行った長谷川平蔵を、小房の粂八が「長谷川様―」と言いながら、峠を下って行くシーンです。

おっと、今日は鬼平では無かったですね。
今日は、十時半睡でしたね。

藩の不可解な事件の、そんな難事件の中に、この『観音妖女』という話があります。
嫁は、花房家1000石、夫は30石2人扶持という全く身分の釣り合わない縁談です。
嫁は、バツイチ、二度目です。

それにしても、旗本なら、大身1000石の目付家と30俵2人扶持の同心と婚姻です。
ほとんど、ありえません。
(逆の場合、妻を誰かの養女にしての婚姻はありますけどね)

1000石と言えば、当主は外出に駕籠に乗っても構わない格式、家来・郎党も20人以上います。
家の使用人も含めると、総勢40人以上の家来を持つ身分です。

片や、30石2人扶持なら下男と下女と多くて2人です。
大抵は、下男1人と言うところです。

こんな不釣合いの結婚は、江戸時代には考えにくいですね。
藩にお届けがあった以上、両家の話ゆえ、とりわけ問題が無いなら受理されます。
もとろん、裏があります。

妻に、癖(へき)があります。
あまり人には言えない「手」の癖です。
気に入った品物は、そのまま、お持ち帰りです。

どこの誰と判っていますから、回りは尻脱ぐに躍起になる。
しかし、この癖は直らないです。

英知にも優れ、虫も殺せないどの美人の妻を、作者白石一郎氏は「観音妖女」とタイトルを、付けられました。
盗まれた観音を大事にされています。

武家の妻として、あたらこちにに同じような事件を起こします。
夫は、そんな妻を離縁しません。
殺されても、妻とは別れないと総目付や目付達に言います。

目付達も悩みます。
さて、総目付の裁定は、「狂人」として、その上で、士分を剥奪、家禄没収、その上に夫婦して領外追放です。

それ少しして、追放された夫婦が峠に居ます。
盗んで来た青磁の観音様を売り払わずに、手元において大切にしています。
観音さまのご利益なのか否かは、わかりません。
しかし、御仏の導きにより、夫婦のご縁があったものと思います。

身分を捨て、家を捨て、生まれた国も捨て去ります。
それでも、夫婦の縁は残っています。
「その後も、二人して、長く長く仲良く暮らしたとさ」、終わりになることを念じます。

不思議なご縁もあるのは事実です。
名も顔も知らないで、恋や愛に変わることもあると思います。
私は仏教徒ですから、それが仏縁なのかもしれません。

今日も一日平穏無事に終わることも祈ります。

最後まで、ひとり芝居にお付き合い下さいまして、心よりお礼申し上げます。