''かんとうしょうえ''の痛風日記

一病息災と心得て、「よかった探し」をしながら、日々感謝して暮させてもらっています

名物庖丁正宗を観る。(上)

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     (『新・日本名刀100選』佐藤寒山著 秋田書店より引用)
日本刀と言うと武士の魂であり、当然の事ながら武器であります。
少し怖いようなイメージもあるのも当然です。刀の事を「人切り庖丁」と揶揄(やゆ)することもあります。

 

でもここに紹介するのはどう観ても、刀でなく庖丁のような形です。鎌倉時代の末、流行りました。刀にも流行があるんですよ。時代背景や戦闘形態に大きく左右されます。

 

日本刀と言うと分かりにくいですが、日本刀にもブランド的なものがあります。
その最高峰は、粟田口藤四郎吉光(よしみつ)、相州五郎入道正宗(まさむね)、越中郷(ごうの)義弘(よしひろ)、の三作です。これは太閤秀吉がそう決めたんです。確かにすべてすごい刀の作者です。他にも多くの刀鍛治がいます。でも、そう天下人が決めたんです。政治的な判断でもあります。

 

秀吉は天下人になるにつれて多くの家臣を持ちます。しかし、農民出身の秀吉にもともと家来は居るはずもなく、出世する中で一族を用い、同輩を臣下となり、天下統一に進めます。他の武士なら戦により、領地を獲得することが常套(じょうとう)でしょうが、秀吉は和睦によってその領土拡大を図ります。もちろん、話し合いによる戦略も限界にあることがあります。

 

小田原の戦などがその最たるものでしょう。この戦の最中、伊達政宗も臣下に下ります。
こうして、信長の死から10数年の短期間で天下人になることに成功します。ただ九州征伐などはこの策略と違いを見せることもあります。

 

戦をせずに和睦によって天下統一を図ります。しかし、それだけの臣下に対する褒賞に対応する土地がありません。戦によって最後に和睦で領地安堵となれば働いてくれた者に対する褒美としての土地(領地)がないのです。

 

ですから、刀や茶器を褒美として与えます。茶器に関しては一国と取り違えてもほしいとするところまで権威を与えます。もちろん、日本刀もしかりです。土地に代わる褒美としての価値を与えるのです。

 

天下人が与えた権威です。一度権威が付けば、価値も下がりません。我先に由緒ある刀やすぐれた刀鍛治の作品が必要になります。粟田口藤四郎吉光(よしみつ)に至っては主人を守るの逸話もあり、江戸時代も含めて武家になくてはならない刀となっていきます。正宗もしかりです。300諸侯以上ある大名小名家にそれだけの作品があろうはずもありません。

 

刀の鑑定家、本阿弥家によって優秀な作品が、名刀に早代わりして行きます。このときの証明書・鑑定書が折紙(おりがみ)と言われます。後押しがあることを「折紙付き」と言うように現在でも使います。

 

政治的な判断で、日本刀の格付けもされていくことになりますが、日本刀は鉄の技術の最高峰です。折(お)れず、曲がらず、よく切れる。他の国に類がないほど切れ味です。

 

現在でも日本刀を作刀されている刀鍛治もおいでですが、基本的には料理に使われる庖丁に受け継がれています。「関の孫六」と称する庖丁もありますが、もともと日本刀の刀鍛治の銘です。庖丁ですらあの切れ味です。日本刀ならもっとよく切れます。固い骨も難なく切ってしまいます。

 

中には伝説ですが、鉄の兜や石灯篭など鉄では切りないものまで切れるような話もあります。いまでも、アニメの中ではそうした逸話を多く話しの中に取り込んでいます。そうした日本刀に銘が付いています。○○剣や○○丸と称する呼称があるのも日本的な刀に関する感覚です。

 

でも写真のようにこれは日本刀の短刀ですが、どう見てもやっぱり庖丁です。
鎌倉時代の末に一時流行したのかもしれません。こうした庖丁と言われる日本刀の短刀が幾口かあります。正宗は庖丁と呼ばれるものが三振あります。これはその一つです。

 

透の樋(ひ)が入っていますので庖丁透し正宗とも呼ばれます。もちろん国宝です。樋とは飾りでもあり、宗教的な表れでもあって、強度を高めたりもしますが、この樋は穴が開いていますので飾り的な要素が強いと思われます。今で言う「穴あき庖丁」です。切れ味抜群です。まな板も切ってしまいます。ちっょとユニークな刀です。

 

作者正宗もそういう意味ではお茶目な方なのかも知れません。職人としての遊び心のある人なのかも知れないと素人ながらこの短刀が好きです。

 

諺(ことわざ)に「大根を正宗で切る」と言うのを見つけたことがあります。普通の大根を名刀の正宗で切ることもおろかさを例える諺です。

 

日々使われる和庖丁に歴史ありです。私も安い鋼(はがね)の和庖丁使っています。錆まずがよく切れます。ステンレスの庖丁も持っていますが、やはり手に馴染んでいます。

 

日々の生活の中で歴史に触れている気持もあります。
ありがたいことです。歴史は、現代につながっています。こうしたものを後世にも伝えるのは私たちの役目かもしれません。
今日をここまで下話に続きます。

 

長々と最後までお付き合い下さいましてありがとさんです。