''かんとうしょうえ''の痛風日記

一病息災と心得て、「よかった探し」をしながら、日々感謝して暮させてもらっています

「時雨煮」と「神無月」

「時雨煮」(しぐれ煮)と「神無月」(かみなづき)は、知らないと読めませんよね。
簡単そうですが面白い言葉です。時の雨と書いて「しぐれ」です。雨は情緒があります。

今日は朝から一日雨でした。前日まで秋晴れとは、一転です。時にこの時期そうしたことがよくあります。今日は雨に関係した話を思いつきました。

日本人の感性はすごいです。雨を降るのをいろいろと使い分けています。「しとしと」とか「ぱらぱら」、「ざあざあ」とか、情景や音からも表現します。また、驟雨(しゅうう)、涙雨、氷雨(ひさめ)とか漢字で表現するとそれ以上情景がイメージされます。

その中にも時雨(しぐれ)もそのひとつです。しぐれるのしぐれです。
料理にもその名前があります。時雨煮(しぐれに)です。アサリやハマグリの貝類、マグロのような魚類、または牛のような肉類に使われる料理方法です。

時同じくして、「神無月」は10月を指します。出雲に神々がこの時期集まります。
つまり、全国には神様がいなくなります。ですから、神様のいない月で、「神無月」です。しかし、出雲では全国の神様がお集まりになるので「神有月」または「神在月」と呼ぶそうです。ごもっともです。
旧暦の表現ですので、今の暦では11月12月頃となりましょうかね。冬の初めです。
暦の表現として、10月は「神無月」と今でも表記します。

「神無月 降りみ降らずみさだめなき 時雨ぞ冬のはじめなりける」
                (よみひとしらず『後撰和歌集』)

後撰和歌集」という名は、古今集の「後」に「撰」ばれた和歌集という意味です。つまり、古今集を補う目的で編纂された和歌集です。撰者の歌は入っていないようです。

この和歌は有名な和歌です。

権大納言烏丸光広卿が江戸下向の折、桑名に差し掛かったとき、時同じくこの時期、雨が降っています。この時にこの雨を見て上記の和歌を詠んだのが時雨煮の由来です。烏丸家は和歌の家です。

桑名といえば、「その手は桑名の焼きハマグリ」ですね。焼き蛤(はまぐり)が有名です。桑名では蛤や浅利などの貝類がよく取れます。

焼いたハマグリはうまいです。もちろん、炭焼きですよ。名店「備前きらく」にはないです。身を下にして焼かないとうまみのある貝の出汁がこぼれます。コハク酸のうまみです。

しかし、焼きハマグリには限界があります。名物のうまいものなしの譬えの如く、その場に行って景色を見て初めて名物です。貝だけ焼いたのを土産に出来ません。ですから、焼きハマグリが土産にもなるようにと醤油と生姜を入れて甘辛く煮てるんですね。

ここで、「桑名の蛤」と桑名で烏丸光広卿が読んだ「和歌」とが結びつきます。この佃煮風のものを「時雨煮」と命名したのです。思いついた人は、天才です。

時雨煮屋の由来によりますと、この和歌を桑名で詠んだのは芭蕉十哲のうち一人、各務支孝(かがみ しこう)いう説明も書いておきます。

志ぐれを語るうえで欠かせない人物が2名います。
あの俳聖松尾芭蕉の門弟、芭蕉十哲と呼ばれる俳人のうち各務支孝(かがみ・しこう 1665-1731年没)。そして、支孝の門人である佐々部岱山(ささべ・たいざん1669-1746年没)です。どのような経緯か不明ですが、岱山が恩師支孝にたまりで炊きあげた特産蛤の命名について相談したところ「十月より製し候事ゆえ、時雨蛤」となったそうです。
(「株式会社 伊勢志ぐれ」のホームページより一部参照)


料理方法も短時間で煮込めるのと、雨が時雨れてすぐにやむそこにもかけてあるのかもしれません。また、貝のむき身を煮立った溜り醤油に入れて短時間で出来上がるのと、むき身を「ぱらぱら」入れる際の様子が時雨のようなイメージしたのかも知れませんね。

とにかく短時間で煮ることが料理の特徴であったようです。あまり貝類を長時間煮込むと堅くなることもありますからね。ぱらぱらした印象ですね。

時雨煮には、必ず生姜(しょうが)が入りますね。そこが佃煮との違いかも知れませんね。
ペーパー調理師の戯言です。間違いかもしれません。気にしないでください。

料理には、旬という季節感だけでなく和歌や歴史の素養も必要になります。
きれいに聞こえますね。ものに比喩するのは上品な感じがします。
とくに雨や月にたとえると言葉のもつ意味、それ以上の情景、情感が加味されます。
おいしそうに聞こえますね。和食の持ついいところかもしれません。

四季のある日本に生まれてよかったです。ありがたいと感謝します。
それ以上においしい時雨煮に感謝です。旨いですからね。

時雨煮を食べるとき和歌を一首そらんじながら頂く。みやびですね。

最後までお付き合い下さいましてありがとさんです。