''かんとうしょうえ''の痛風日記

一病息災と心得て、「よかった探し」をしながら、日々感謝して暮させてもらっています

「赤垣源蔵徳利の別れ」に見るもらい涙。

講談、浪曲とちっと大人の話芸は、なかなか馴染みのないものです。
子供の頃、父が浪曲好きでした。
子供は、アニメの方が良いに決まっています。
ですから大嫌いでした。

 

歳を重ね30歳過ぎから講談、浪曲、もちろん落語もよく聞くようになりました。
NHKで朝ドラ『ちりとてちん』なども手伝って、何度かの落語ブームもあり、いろんな作品がネットで見ることが出来ます。

 

私は話芸に笑いを求めません。
人の情をテーマにしたシリアスな話が好きです。
時に人の琴線に触れる、どちらかというと涙しながら聞く話しが好きになんです。
笑いもいいですが、人情話は話芸の至高です。

 

親と子のテーマであったり、家族のテーマであったりと永久のテーマです。
これに泣き笑いが入ります。
泣きが入った方が笑いも生きます。

 

関西で言うなら、「藤山寛美」調ですね。
なかなかこうした芸は出て来ません。
しかしながら、歳を重ねていくと自分が作品に近づきます。
とくに嫌いだった講談・浪曲のエッセンスに情が深くあることに気づきます。
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有名な「赤垣源蔵(あかがき げんぞう)徳利の別れ」にもあります。
私は、浪曲師・春日井梅鶯(ばいおう)の作品で聞いています。
百均で購入です。

 

簡単にあらすじを書きます。
赤穂浪士の一人、赤垣源蔵(あかがきげんぞう)は、徳利をひとつぶら下げて兄の塩山伊左衛門(いざえもん)の家を訪ねます。

 

討入りは極秘事項です。
身内であろうと打ち明けたりしません。
最後になることを踏まえて、こっそりと訪問して、挨拶に向かいます。

 

兄は、留守です。
本来出迎えるはずの兄嫁(マキ)も、仮病を理由に会いません。
お金の無心に来たと毛嫌いしています。
厄介者と思っています。
仕方ありません。

 

ですから、源蔵は女中(お杉)に願って、兄の着物を衣紋がけに掛けさせます。
これを兄と思い話しかけながら、持参の酒を一人手杓酒で呑んでいます。
ちょっと泣けます。

 

少ししてから、女中(お杉)に「遠くに行くことになった」と伝え、帰りはと聞くと盆の頃になるという。
もちろん、初盆のことでしょう。
生きて帰るは無理であることを匂わせています。

 

兄・伊左衛門が夜分に帰って来ます。
妻から弟・源蔵が来たことを伝えます。
妻が、自分は体の加減が悪いことに会わなかった事を伝えます。
すると妻が毛嫌いして知ることは承知しているが、それでも自分の弟であると妻を叱ります。
(どこの家でも同じようなことがあるはずです)

 

翌朝、兄・伊左衛門は、赤穂浪士の討入りを知り、下男の市助(いちすけ)に見に行かせます。
もし、その中に弟いたときは、近所に聞こえるように弟・源蔵が居たと大声で帰って来いと伝えます。(兄として誇らしい気持ちが伝わります)

 

下男・市助は、源蔵に再会します。
そのおり、兄へと短冊と文、兄嫁には病気にと朝鮮人参を渡すように伝えます。
それに市助を含めた下男(六蔵)下女(お杉)三人に、みなで分けよと金を差し出します。

 

市助は言います。金は使うとなくなる、何か残る物をとせがみます。
源蔵は首に掛けていた呼笛を形見として与えます。
もちろん、市助は大声で屋敷に返ってくるという話です。

 

人に対する気遣いが、あちらこちらに細やかに散りばめられています。
涙がうるうると来ます。涙を流さずには居られません。
もちろん話芸です。演者の力よって話もたいぶ変わります。
話は人情のエッセンスでいっぱいです。

 

話は、ここでは終わりません。
実は、この話はウソです。
どこからかというと、最初からすべてです。
涙返せと言いたくなりそうですが、そうではないですね。

 

名前も、もちろんウソです。
赤埴源蔵(あかばね げんぞう)です。
似ています。

 

芝居ですから、本名を使っていません。
でも分かるようにネーミングです。
源蔵に兄もいません。

 

本当は妹がいました。
妹の嫁ぎ先・田村縫右衛門(たむらぬえもん)邸で、岳父(義父)になじられます。
武士として恥ずかしいとなじられるのです。
ここで最後の酒を出され呑みます。

 

でも、源蔵は下戸です。
お酒は、呑めません。
無理やり一口呑んで、妹の家を出て行きます。
それでも討入りは、もちろん参加しています。
なじった岳父(義父)は、真実を知り大変後悔したようです。

 

この話が脚本されて歌舞伎・講談・浪曲により人情を色づけされます。
真実はともかく話はよく出来ています。
ウソと分かっていて、もう一度聞いても涙は出ますね。
人の情は永遠のテーマです。

 

そんな遠い昔の話に、思いを馳せます。
静かに話芸に親しむのも、たまにはいい時間です。
こんな時間にも作品にも感謝したいです。
ありがとさんです。

 

今日は好き嫌いのある話であったと思います。
申し訳ありません。

 

それでも、最後までお付き合い下さいまして、ありがとさんです。