''かんとうしょうえ''の痛風日記

一病息災と心得て、「よかった探し」をしながら、日々感謝して暮させてもらっています

鰆(さわら)の幽庵焼 「北村幽庵」編

魚偏(さかなへん)に春は、鰆です。春という字が付く以上春が旬であることは分かります。
一般的には3~5月が旬といわれます。地域によってもすこし旬に違いはあります。
塩焼きも美味しいですし、西京焼きなど、総じて焼き物に良く使われます。鮮度がいいと刺身が美味しいとの事ですが、まだ食したことはありません。

その代表的な料理方法に鰆の幽庵焼きがあります。緑色の織部焼きの四方皿に盛り付ける。堪りません。添え物は赤いもの(定番ですが、はじかみ生姜など)が織部の補色(緑と真逆の色)となって一層食欲をそそります。そりを付けて焼き上げ、杉板の八寸にのせると料亭や茶席の懐石風になりますよ。いくらでも出世の出きる料理です。

それを考案したのが、江戸時代の近江の堅田におりました北村幽庵(1648~1719)と言う茶人です。俗称、「堅田の幽庵」と呼ばれます。千宗旦の弟子藤村庸軒の門人で茶人としても食通でも有名です。特に香りに関しては超人的なのがあります。逸話は後ほど紹介します。

正しくは幽庵焼きと言いますが、柚庵焼きとも祐庵焼きとも書かれます。
マダイ、マナカツオ、カマスなど少し淡白な魚によく使われる調理法です。魚の代わりに鳥で使われることもあります。

みりんや醤油や酒で作った漬けだれに「ゆず」の輪切りなどの香りのするものを一緒に漬け込む。そして、焼いたものです。ですから柚(ゆず)の字が当てられることも有ります。

物の本には、この焼き物を考案したというように発案者的に書かれていますが、幽庵の時代以降にもあまり幽庵焼きと茶懐石の料理にも名前を見ることはありません。後世の人によって名づけられたものでしょう。また、幽庵自身が考えた料理ではないと私は考えています。

抹茶を使った料理に「利休」というのを良く使います。抹茶と塩を混ぜた「利休塩」であるとか、揚げ物とかにも「利休揚」などとかによく使われます。しかし、利休自身はやっていないと思います。やった記録も私は見たことが有りません。茶会の料理記録も料理の内容が淡々と書かれてあるだけです。

同じように近江の淡水魚を良く食べる湖族の幽庵が、海のさかなをみりんなどに漬け込んで食べたとは考えににくいです。新鮮なものが食べられるのですから、せいぜい日本海から塩漬けされた鯖や鰯は入ってくる程度でそれ程食していなかったと思われます。

後世の人が、香りといえば「幽庵」というイメージから付けられた名前ではないかと思います。いつから使われた言葉かはっきりわかりません。ご存知の方おいでしたら教えてください。
多分料理人の考案と思われます。私の推測の域でしかありません。

幽庵の香りについての逸話を2つほど紹介しましょう。
茶人である幽庵は、弟子に琵琶湖の幽庵の指定した場所で水をくみ上げるさせるのが日課でした。しかし、弟子がサボって近場で水を汲んで来たところ、水を飲むなりこれを指摘した言います。比良山の湧き水のくみ上げたものと近場の綺麗な水とで違いは有るにしても、それを呑んで言い当てることは不可能です。当時の琵琶湖の水は大変綺麗なものでしょうし、飲用に使っていたのかもしれません。ですから、余計に至難の業です。

また、茶人であり交友の広かった幽庵が友人宅(大津か草津かと)で過ごしているとき、団子が出たといいます。食べ終えるなり団子の串を見ながら「この竹はこの辺の近江の物ではないなぁ」とつぶやきました。食通の幽庵が言った言葉に、そこの主が団子を作った家の料理人を呼び話を聞きました。
「この竹はどうした?」
「今朝(けさ)、河内の方から瀬戸物売りに来た行商人の天秤にしていた竹です」
そうです。瀬戸物を竹につるし天秤棒にして持ってきた。瀬戸物はすべて売れたので、竹を置いて行った。たまたま、その竹が青々しかったので団子の串にして出したものだったのです。つまり、河内(大阪)の竹であり、幽庵の言った通りであり、その場にいた者を驚かせたということでした。

竹がもっている香りといい、水のもっている香りといい、茶人の茶に対する香りの感覚の鋭さに驚かされるばかりです。茶室には色の強い花や香りの強い花を禁じられているようです。茶の香りを台無しにするからでしょうね。とくに金木犀(きんもくせい)は、トイレじゃないんだから台無しですね。

やはり、自然と同化する「侘び」「寂び」には向いてないのかもしれません。

この話を見た方は、団子たべるとき、串に聞いて下さい。
「そもじは、いずこの出じゃ?」
きっと「ニーハオ」と返事してくれますよ。

「おち」が付いたところで、鰆を食べて季節を感じて下さいね。幽庵焼き香りが良くて甘いめで美味しいですよ。一度試されては如何でしょうか?
鰆は、簡単にできる「塩焼き」が一番よく食べます。

今日も一日「感謝」して、楽しく過ごせますように願います。