少し前、丈母の命日でした。
25年が過ぎたと聞きます。
もちろん、生前にお会いしたことはありません。
孫娘のゆうゆうも、写真でしか見たことがありません。
仏壇の前に、岳父丈母の写真が置かれています。
5歳児ゆうゆうは、嫁と仏前に手を合わせて、おりんを鳴らします。
家から近くの墓参にも、ゆうゆうは喜んでいきます。
毎月数度の墓参も、ゆうゆうが同行して、墓の花を供えたり掃除をしたりするのを手伝います。
家には、立派な仏壇があります。
仏壇に合わせます。
私の持っている特別な時に使う線香です。
京都烏丸二条の松栄堂 東寺伝来の風信香という香らしいです。
家での香りも凄いです。
京都の高級な料理屋の座敷か格式の高い寺院に入ったみたいです。
仏間のような抹香臭い匂いはしません。
貧がよくて、少し甘い香りに感じます。
東寺さんに参拝した時に頂きました。
ご縁があって、弘法さんの時に、非公開のお庭を拝見したことがあります。
あの有名な書家・榊莫山の「東寺」の書を飾って有る部屋に通して戴きました。
やはり、なかなか立派な書でしたね。
榊莫山の寒山拾得の「山へ行こうか、川へ行こうか」「空に行こう」の意味深な禅語のような書画が好きですね。
若い頃、中国の蘇州の寒山寺にも行きました。
寒山拾得の二人の複雑な苦悩を知って、いろいろとその苦悩を経て、二人して暮らすようになったのを知りました。
元々兄弟のような関係であったと聞きます。
お土産に、寒山寺の有名な中唐の詩人で政治家の張継の七言絶句「楓橋夜泊」漢詩の硯と拓本を買い求めました。
ネットで見たら、1万~1.5万円ほどの値段が付いています。
売れるなら、売ろうかと思ったくらいです。
あの拓本の墨の香りは、独特すぎます。
香の香りと、墨の香りって、独特です。
米朝さんの落語に、「世帯念仏」と言う噺があります。
最初の冒頭の枕で、有名な門跡さんの「南無阿弥陀仏」を唱えるシーンが、絶妙です。
実家で神主さんの家であった米朝さんにして、その「南無阿弥陀仏」のシーンと船場の仏間で一掴数万円するように高価な香でも上げながらの「南無阿弥陀仏」を聞くと天から1万円が降って来るみたいな気がすると言うシーンが、いつ聞いても心に止まります。
それに比べて対比するのは、長屋の信心さもない「南無阿弥陀仏」です。
読経しながら、朝ごはんや昼ごはんの話を嫁と話したり、泥鰌売りに来た時の買い方とか、「南無阿弥陀仏」より自分の餌の心配ばかりで、その対比が愉快ですね。
東寺伝来の風信香と言うのは、弘法大師 空海が、伝教大師 最澄に差し出した真筆の書簡「風信帖」の中に、お香の贈り物を感謝している文章があるところから、「風信香」の名前が付いたと書き記しの説明が入っています。
とてもいい香りです。
私も香の毒牙に当たられたかもしれません。
世俗の垢にまみれ過ぎたみたいです。
香の香りだけで、家の中も、嫁との会話も、豊かになりました。
香は聞くと言います。
「死後の人間が食べるは匂いだけで、善行を行った死者は良い香りを食べる」と聞きます。
善女人の丈母にもいい香りを食して供養出来れば、これ幸いです。
親子3人のささやかな暮しに感謝して暮させて貰っています。
ありがたいことです。
ささやかな「よかった」を探せて暮させてもらっています。
ありがたいことです。
日々の暮らしの中、心の三毒を廃し、平穏無事に暮らしたいです。
神仏に手を合わせて、感謝して暮らさせてもらっています。
ありがたいと感謝です。